ブラックスワン

私は現在、インデックスファンドの投資信託に月々少額の積立をしています。自分の子供にも将来は少額でもいいので、ぜひ投資をやって欲しいと思っています。理由はいくつかあるのですが、そのひとつは自立心です。

よく自己責任で行うのが投資の大原則と言われます。こうした自分でリスクを考え決断をして投資を行うことが、自立心を育むのに有効なのではないかと勝手に考えています。


『ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質著者:ナシーム・ニコラス・タレブ

本書は「不確実性とリスクの本質」について書かれていて、その内容は投資について考える時に、かなり参考になる本だと思っています。

「ブラック・スワン理論」
「ブラック・スワン理論」とは、ナシーム・ニコラス・タレブが提唱した理論で主に三つの特徴があります。

まず第一の特徴は、異常であること。それまでの常識や経験では考えられない現象で、そのために予測をすることはできない現象である。第二の特徴は、それが起こった時にとても大きな衝撃があること。そして第三の特徴は、それが起こった後に適当な説明をつけて、予測可能だったことにしてしまうこと。

白鳥は白い鳥だけと思われていたものが、1697年にオーストラリアで黒い白鳥(コクチョウ:ブラック・スワン)が発見されたことで、それまでの白鳥に対する常識が破られました。この出来事から、常識が大きく崩れ多大な影響を与える出来事を「ブラック・スワン」と呼ぶようになります。

2001年の9.11テロや、2008年に起きたリーマン・ショック(世界金融危機)などがブラック・スワンの例としてあげられます。

著者のタレブは、私達には大きなランダムネス(規則的でないもの)は見えず、直感や思考はリスクを知るのに向いていないと語ります。私達は、うしろを振り返る能力は優れているが未来を予測するのは苦手であるとし、そもそも予測には構造的に組み込まれた限界があると説いています。

タレブ自身、元々ヘッジファンドのトレーダーであったにも関わらず、株式市場でトレーダーがバカ勝ちするのは、「たまたまで、まぐれ」の要素が大きいと断言しています。また金融工学で広く採用されている正規分布モデルを批判し、それを「大いなる知的詐欺」と呼びました。

大投資家のウォーレン・バフェットは、株式投資に成功した理由の一つに、アメリカに生まれた”運の良さ”をあげ、株式市場の無い発展途上国に生まれていたら、投資そのものに参加することが出来なかったと発言しています。

また、経済評論家で元・楽天証券客員研究員の山崎元さん(残念ながら、2024年1月1日にお亡くなりになりました)は、株価がいつ上がるのか予測するのは難しいので、長く投資を行うこと(長期投資)が、「取りこぼし」をしないための有効な手段になると説明しています。

大投資家が成功したのは運が良かったからと言い、経済のプロが株式市場を予測するのは難しいとしている。それが株式市場の現状でもあります。

しかし、そんな中でもタレブはけっして投資をしてはいけないとか、リスクを取るなとは言っていません。未来を希望的にだけ見てはいけない、知識やデータや統計を過信してはいけない、認知バイアスや経験の罠には十分注意しなければいけないと警告をしながらも、一方では、「ブラック・スワン」には、例えば「ベンチャー企業の大成功」などに見られるポジティブなブラック・スワンもあるため、そのようなものは積極的に受け入れるようにと提言しています。そしてその具体的な方法として、バーベル戦略を挙げてます。

バーベル戦略
バーベル戦略とは、ハイリスク・ハイリターンの投機的な資産とローリスク・ローリターンの安全性の高い資産を組み合わせて運用する手法。

タレブは「中ぐらいのリスク」の投資対象にお金をかけるのではなく、資産の85%~90%をものすごく安全な資産へ投資し、残りの10%~15%をものすごく投機的なものに賭ける資産運用を紹介しています。

可能な限り超保守的で、可能な限り超積極的になることが重要だと語っています。

私は本書を「懐疑的な考えを持ちながらも冒険することをためらってはいけない」と忠告する良書だと思いました。


未来を予測するのは難しいですが、例えば「将来の年金」について考えた場合、とても楽観的に考えることが出来ません。加えて普通預金や定期預金の金利を見ると、とても資産形成に有効とは思えません。また税金などは、高くなることはあっても安くなることは一時的にしかないだろうと思っています。

こういったことからも、子供が将来に抱える経済的な苦労をどうしても考えてしまうことがあります。大した稼ぎもない親としては出来ることも限られているので、子ども自身が「自助努力」のひとつとして、ぜひ投資について考えて欲しいと思っています。(投資は自己責任で行うものなので、投資をしないという選択ももちろんアリです。)


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