『宇宙からの帰還』著者:立花隆
「宇宙体験という、人類史上最も特異な体験を持った宇宙飛行士たちは、その体験によって、内的にどんな変化をこうむったのだろか。」本書・文庫版P,34
著者の立花隆さんは、”宇宙体験が人間に与える影響”に関心を持ち、アメリカの12人の宇宙飛行士へインタビューを行いました。本書は、宇宙飛行士たちが宇宙体験によって受けた内的体験を、インタビューを中心に描き、宇宙や宇宙飛行について、徹底した取材と調査で解説しています。
本書の「宇宙からの帰還(第二章)」にもあるようにNASAでは宇宙飛行士が帰還すると、いろいろな分野の専門家による聞き取り調査を行うそうですが、その内容は、技術的・科学的に限定され、心理的・精神的側面の調査は行われてなかったそうです。NASAでも関心がない宇宙飛行士の意識や精神の部分に、立花隆さんは光を当てました。
宇宙体験をした宇宙飛行士の中には、宇宙で神の存在を感じた人が少なくないそうです。その中でも、アポロ15号に搭乗したジム・アーウィンは、宇宙で神の存在を感じ、宇宙から戻るとNASAをやめ、50万人もの人を集めるほどの集会を行う、キリスト教の伝道者になりました。一方、現実的に宇宙飛行士という知名度を活かして、ビジネスで成功したり、政治家になって大統領予備選挙にまで出馬した飛行士もいます。
宇宙体験にはポジティブなことばかりでなく、ネガティブなこともあります。
アポロ11号で月面に着陸し、アームストロング船長に続いて、”月面歩行を行った史上2番目の男”
バズ・オルドリンは、地球に帰ったあと、精神に異常をきたし精神病院へ入ることになりました。
単行本の初版発行は40年前の1983年ですが、内容は全然古くなく、「宇宙体験と意識の変化」を描いた名著で著者の代表作です。日本人宇宙飛行士の多くが本書から影響を受けたと、いろいろな場面で語っています。
宇宙飛行士の野口聡一さんは、宇宙体験によってネガティブな影響を受けたそうです。
『どう生きるかつらかったときの話をしよう』
自分らしく生きるために必要な22のこと
著者:野口聡一
宇宙は正と負、2つのインパクトを与えてくれます。 正のインパクトは、まばゆいばかりの地球の姿と一対一で 対峙 することで宇宙的な視野を獲得できること、負のインパクトは、その宇宙体験がまばゆければまばゆいほど、その後の「日常の帰還」時の落差が大きく「燃え尽き症候群」を招くこと ー本書・kindle版 P,9
著者の野口聡一さんは、2回目の宇宙飛行のあとに10年間にもおよぶ苦しみを味わうことになります。寂寥感(せきりょうかん)や喪失感を抱えながらも、当事者研究(困難を抱える本人が、専門家や類似した困難を持つ仲間と共に困難の対処法に ついて研究する営み)を通じてその苦しみに向き合い、どう生きるかを考えその答えを導き出しました。
自分らしく生きるために大事なことや、「宇宙よりも遠い自分の心の中への旅を通してわかったこと」について語っています。
『宇宙から帰ってきた日本人』日本人宇宙飛行士全12人の証言
著者:稲泉連
1990年に日本人で初めて宇宙へ飛び出した秋山豊寛さんから2017年から2018年にかけて宇宙飛行をした金井宣茂さんまで、歴代の日本人宇宙飛行士12人にインタビューし、それをまとめた本です。
何人かの宇宙飛行士が共通して感じたことや、逆に一部の個人だけが感じたこと、また、日本人宇宙飛行士30年の歴史の間に生まれた、旧世代と新世代のギャップなど興味ある話が多く載っています。
宇宙が人体に与える影響としての話で、「宇宙飛行士が地球に帰還した時に、スタッフに抱えられないと立っていられないのは、筋力が劣っているためではなく、”重力酔い”の状態になっているためである。」などの話は、初めて知りました。
宇宙に関する映画を1本紹介。
映画『アポロ13』
出演:トム・ハンクス、ケヴィン・ベーコン、エド・ハリス
監督:ロン・ハワード
本編140分 1995年公開
あらすじ
1970年4月、月へと向かうアポロ13号は無事打ち上げに成功。しかし月に到着する前に、突然爆発事故が発生する。鳴り響く警報、そしてコントロールを失う機体から流れ出る白い煙。その白い気体は酸素タンクから漏れる酸素であった・・・。次々と起こる問題に立ち向かいながら、アポロ13号は地球への帰還を目指す。アポロ13号に実際に起こった爆発事故を描く真実の物語。
アポロ13号のミッションはのちに”輝かしい失敗”と呼ばれました。