2019年にNetflixで配信された映画「アイリッシュマン」は、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの共演や、劇場公開からわずか4週間でNetflixで配信されるなど、いろいろと話題を呼びました。また、デ・ニーロが若き日の主人公を演じるさいに、特殊メイクではなく「インダストリアル・ライト&マジック」社の特殊効果(VFX)を使って、デ・ニーロを若返らせた映像が話題になりました。
この記事では、私が映画の役作りで凄いと思った作品を紹介します。(あくまで個人的な感想ですが)
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』
監督:ジョー・ライト
出演:ゲイリー・オールドマン
クリスティン・スコット・トーマス
ベン・メンデルスソーン
上映時間:125分 公開:2018年
あらすじ
第2次世界大戦初期の1940年。イギリス首相のネヴィル・チェンバレンの辞任を受け、新しくウィンストン・チャーチルが首相に就任する。ナチス・ドイツがフランスを陥落寸前まで追い込み、イギリスにも侵略しようとする中、チャーチルは、和平交渉か徹底抗戦か決断を迫られる。
ウィンストン・チャーチルの首相就任から奇跡のダンケルク撤退戦までを描いた作品。
本作でゲイリー・オールドマンは、特殊メイクを施してチャーチルの役作りをしました。特殊メイクを担当したのは、日本人で特殊メイクアーティストの辻一弘。一度はメイクアーティストを引退していましたが、ゲイリー・オールドマンが直々にオファーしたために復帰したそうです。ちなみに辻一弘 は、ゲイリー・オールドマンの特殊メイクのみを行いました。
このチャーチルの特殊メイクは、開発するのに6ヶ月間かかり、現場ではメイクのために毎日3時間半かかったそうです。
本作で主演のゲイリーオールドマンは、アカデミー賞主演男優賞を受賞。辻一弘もアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しています。
映画「ダークナイト・トリロジー」で、共演したクリスチャン・ベールは、映画「バイス」での役作りのために20kg体重を増やしました。その増量の途中で、「ウィストン・チャーチル」のゲイリー・オールドマンを見て、「どのくらい太ったのか」と相談をしたそうです。オールドマンの「太っていない」との答えに、「特殊メイクがすごく進歩していたのを知らなくてとても後悔した」とバラエティで語ったエピソードがあります。
ちなみにゲイリー・オールドマンは俳優業からの引退を発表しています。Apple TV+にて配信中のドラマ「窓際のスパイ」を持って引退したいと発言しています。
『チャーリー』
監督:リチャード・アッテンボロー
出演:ロバート・ダウニー・ジュニア
ジェラルディン・チャップリン
ダン・エイクロイド
上映時間:145分 公開:1993年
あらすじ
芝居小屋での母親の代役で舞台デビューした少年時代。その母親の精神疾患。アメリカへ渡り、映画での大成功から赤狩りによるアメリカ追放。そしてアカデミー賞名誉賞受賞まで。チャーリー・チャップリンの波瀾に満ちた生涯を描いた作品。
ロバート・ダウニー・ジュニアの代表作といえば、「アイアンマン」ですが、私は1993年公開の映画「チャーリー」がいまだに強く印象に残っています。
本作でのロバート・ダウニー・ジュニアは、まさにチャップリンそのものです。ちょっとしたメイクとパントマイムで、チャップリンの表情や動作を見事に再現しています。
冒頭のタイトルシーンでチャップリンがドアを開けてたたずんだ後、足でドアを閉めながら部屋の中に入って来るシーンがあります。照明が当たっていないためにシルエットだけの映像なのですが、立ち止まった時のステッキのしなり方やドアを閉めるさいの足の動きがどう見てもチャップリン。きっとチャップリンの動きを凄く研究をして、努力して身につけたと思われるすごい演技です。
本作のチャップリン役のオーデションは3年かかり、あの名優、ダスティン・ホフマンもオーデションを受けたそうです。
『レイジング・ブル』
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ
ジョー・ペシ
キャッシー・モリアーティ
上演時間:129分 公開:1981年
実在した元ミドル級チャンピオンのボクサー「ジェイク・ラモッタ」の半生を描いた作品。その攻撃的な戦い方から「レイジング・ブル」の異名が付けられました。当時、史上最高のボクサーと言われ無敗を誇っていた、拳聖「シュガー・レイ・ロビンソン」に初めての黒星を付けたボクサーです。
映画の役作りと聞いて真っ先に思い浮かべる俳優は、ロバート・デ・ニーロです。本作「レイジング・ブル」では、主人公ジェイク・ラモッタの現役時代の鍛えられた肉体から、引退後の肥満体型までを演じるために体重を27kgも増量しました。(撮影は増量待ちで3ヶ月待ったそうです。)また、「タクシードライバー」では、実際に3週間タクシードライバーとして勤務したり、「ゴッドファーザーⅡ」では、シチリア島に住んでシチリア訛りのイタリア語を習得。「アンタッチャブル」では前髪まで抜いたなど、その徹底した役作りは「デ・ニーロ・アプローチ」と呼ばれてました。
今では役作りのために体重を増減することは珍しくないことだと思いますが、デ・ニーロは間違いなくその先駆者だと思います。
『フランケンシュタイン』
監督:ケネス・ブラナー
出演:ロバート・デ・ニーロ
ケネス・ブラナー
ヘレナ・ボナム=カーター
上映時間:124分 公開:1995年
あらすじ
医学を志す主人公の「ヴィクター・フランケンシュタイン」。錬金術に傾倒していた彼は、やがて生命創造に取り憑かれ、やがて死体を生き返らせる実験を行う。実験は成功し、死体は醜いクリーチャー(怪物)となって生き返った。・・・
メアリーシェリーの古典「フランケンシュタイン」を映画化した本作は、ロバート・デ・ニーロが特殊メイクでクリーチャー(怪物)役を演じて話題になりました。中盤にクリーチャーが泣き崩れるシーンがあるのですが、特殊メイクを施していてもデ・ニーロだとわかります。(ちなみに、フランケンシュタインは、クリーチャー(怪物)を作った科学者の名前です)
プロデューサーにフランシス・フォード・コッポラ。監督は「ダンケルク」や「TENET テネット」に出演したケネス・ブラナーで、主人公のフランケンシュタインも演じています。
本作のジャンルは、ゴシック・ホラーになっていますが、「生命創造は許されるのか?」が主要なテーマになっていて、現在の「ゲノム編集」や「クローン技術」など生命倫理を考えさせられる作品になっています。