認知症の母

私には、今年で85歳になる母がいます。その母が4年前に認知症を発症しました。


私の母は自営業で雑貨屋を営んでいました。ある日、常連の近所のおばさんが母の店で買い物をしているときに、簡単なお釣りの計算ができず、1000円札を持ったまま考え込んでいる母を見て、どうも様子がおかしいと異変に気付き、私たち家族に連絡をしてきました。

その近所のおばさんから、「親戚にも似たような人がいた。もしかしたら、脳梗塞かもしれないよ。」と言われ、後日母を病院へ連れて行き、検査を受けると、アルツハイマー型認知症だと診断されました。

また何年も前から足腰も衰えてきています。まともに歩くのも支障が出てきているのですが、認知症のためにそういったことも忘れ、ある日ベットから飛び起きすぐに歩こうとして転落してしまい、大腿骨と左腕を骨折してしまいました。その後、救急車で運ばれリハビリも含め、3ヶ月間入院しました。

退院が近づいて、母の担当のケアマネジャーから、「認知症なので家で一人はあぶない」と言われ、「常に付き添える人がいないのであれば、どこか施設へ入れた方がいい」とも言われました。

すでに父も他界しており、私達、子供は全員仕事に就いているので、母を介護施設へ移すことにしました。

母は、もともと気難しく人の話にあまり耳を貸せません。足が悪くなってきた時に、「リハビリがてらデイケアにでも行ったらどうだ」と話したところ、「あんな所へ行ったら、ボケるのが早くなる。」と行くのを拒否していました。(後に日帰りだとわかり、通うようになりました。本人は日帰りだと知っていませんでした。)

デイケアサービスさえ嫌がる、そんな母を介護施設入居させるのは大変だと思ったのですが、状況が理解できていないのか、わりとスムーズに入居できました。

現在、母は介護施設に居て、たまに会う母を見ていると、認知症が確実に進んでいるように見えます。


話は変わります。

今から3年ほど前の話ですが、私が朝出勤する時によく使っている通り道でのことです。その通り道の途中に3階建てのアパートがあり、そのアパートの前の歩道にある花壇(歩道とかによくある、植樹などに使う花壇のような土の部分)を手入れしている老夫婦がいました。夫婦そろってよく二人で雑草をとったり、パンジーのような花を植えたりしていました。

それから2ヶ月ぐらいたったある日、おじいさんが一人で花壇の手入れをしている姿を見かけました。その時は、「ばあさん風邪でもひいたかな」、ぐらいに思っていました。また2,3日たっておじいさんが一人で手入れをしているのを見たときに、すぐそばのアパートの一階の窓から、おばあさんが子供のような笑顔で、道行く車に手を振っているのを見つけました。

私は、そのおばあさん見た瞬間すぐに”認知症”だと思いました。そして、おばあさんが認知症になったためにおじいさんが一人で手入れをするようになったんだと、考えました。私の思い込みかもしれませんが、一人で手入れをするおじいさんは、少し寂しそうに見えました。

しばらくすると、今度はおじいさんの姿も見かけなくなりました。おじいさんを見かけなくなって、私は少し残念な気持ちになっていたのですが、日がたつうちにおじいさんの事を忘れるようになりました。

老夫婦のいない花壇は次第に荒れ、手入れは半年に一回ぐらいにやってくる市から委託された”草刈りの業者”みたいな人たちが雑草を刈るぐらいです。

おじいさんのことは、完全に忘れていたのですが、今から3ヶ月ほど前に、また花壇の手入れをしているおじいさんの姿を見かけました。私はすぐにアパートの窓を確認したのですが、おばあさんの姿はありませんでした。寂しそうに見えたおじいさんは、少し身が軽くなったようにも見えました。

正直に言うと、もしかしたら、おばあさんはもう亡くなったのかもしれないと私は思いました。(存命ならば、大変失礼なことです。申し訳ありません。)

この老夫婦のことは、実際に私がこの目で見たことです。しかしおばあさんが”認知症”とか”亡くなったかもしれない”とか、事実確認はしていません。あくまでも私の想像です。


私は、母や、花壇を手入れしていた老夫婦を見ていて、”残された家族”というものを考えるようになりました。

このブログのプロフィールにすでに書いていますが、私は50歳になって子供ができました。子供が大人になるころ、私は70です。認知症になっていてもおかしくありません。

妻には私が認知症になったら、迷わず施設に入れてほしいと話しています。そしてそのための費用を捻出しなければと考えています。費用を捻出するのは大変なことですが、子供を見ているとそれほど苦とも思いません。


#認知症 #老後 #母親

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