浪速のロッキーを捨てた男

『浪速のロッキーを<捨てた>男 ー稀代のプロモーター・津田博明の人生
 著者:浅沢 英

元プロボクサーで、現在タレントで俳優の赤井英和さん。ボクシング現役時代は、「浪速のロッキー」と呼ばれる人気選手で、デビュー以来12試合連続ノックアウト勝ちの当時の日本記録も作りました。


本書は、その赤井さんが所属していたジムのトレーナーで会長、稀代のプロモーターでもあった、津田博明さんの半生を綴ったものです。(プロモーターとは興行主のこと)

津田博明さんは、1980年に大阪市西成区天下茶屋で”愛寿ボクシングジム”(のちにグリーンツダボクシングジムなど、何回か改名)を設立します。ジムからは井岡弘樹など、4人の世界チャンピオンを出しました。また途中で移籍したが亀田興毅(日本人初の3階級制覇)も所属し、弟の亀田大毅も練習生でした。

津田博明は、指導者として評判が良かったことに加え、プロモーターとしての腕も凄く、世界タイトルマッチ2試合と東洋太平洋タイトルマッチ1試合、そして日本タイトルマッチ2試合を、すべて1日で行う「5大タイトルマッチ」を行い成功しました。

ボクシング練習生からトレーナー、そして自分のジムを立ち上げて(始めはジムもなく、公園で練習をしています)それから5大タイトル戦のプロモーションまで輝かしい実績を残します。その一方でジム初期からのメンバー赤井英和との確執など、生き方はけっして”器用”ではなく、成功に向かってまっすぐ進んだとは言えない人生でした。


津田と赤井は最後まで和解のようなものはありませんでした。しかし、本書の終章で亀田興毅のプロ入り会見の様子が書かれているのですが、その会見で津田は、亀田興毅のことを、こう紹介します。

「浪速のロッキー二世ですわ」


私はその文章を読んで、津田博明と赤井英和、二人のことを考え少し胸が詰まりました。(津田さんのあせり、赤井さんのジムを思う真っ直ぐさ、また二人のすれ違いがなんとも切ないです)

本書の帯に書かれているように、「成功とは何か」「幸福とは何か」を問う一冊だと思います。

私は本書が映画化されたら絶対にいい作品になるだろうと思います。ロバート・デ・ニーロ主演の名作「レイジング・ブル」に並ぶ映画になるだろうと、本気で思っています。



『AKAI』
 監督:赤井 英五郎
2022年公開 上映時間88分

赤井英和さんのドキュメント映画です。昔の映像やインタビュー、引退のきっかけとなる大和田正春との試合、そして、大和田戦によって”急性硬膜下血腫”、”脳挫傷”となりあわただしく病院へ運び込まれる様子(生存率20%と言われた)、そのあとの入院時の状況など多くの映像を収録しています。

私はこの映画ではじめて、赤井さんの最後試合、対”大和田正春”戦をくわしく観ました。勝利した時の大和田陣営のすごい喜ぶ様子が、赤井さんの人気や強さを物語っていると感じました。

名トレーナー、ピート・タウンゼントの映像やインタビューもあります。監督は赤井英和の長男、赤井英五郎。


『どついたるねん』
出演:赤井英和 監督:阪本順治
1989年公開 上映時間110分

赤井英和の主役デビュー作。赤井英和の自伝が原作のフィクション映画。

試合中にKOされ、再起不能になった主人公が再びカムバックする姿を描く。

本作では赤井英和、最後の試合の対戦相手、大和田正春(本人)が友情出演していて、主人公(赤井英和)が試合に望む前に二人は顔を合わせ、シャドーボクシングするシーンがあります。このシーンがいいですね。


私が子供のころ、ボクシングといえば”具志堅用高”でした。引退前の2,3試合だけ観ただけですが、ところどころ記憶はあります。

具志堅さん最後の試合は、沖縄での凱旋試合でした。その試合で具志堅さんは、KO負けをしてしまいます。私は、ただただショックでした。一緒に観ていた父親もふだんより静かだったように思います。

父親を見て、父もやはりショックなんだなと思った記憶があります。

#ボクシング #津田博明 #赤井英和 #スポーツ

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