今年で3歳になる自分の子供が、将来どのような人間になってほしいかと考えた時に、まず頭に浮かんだのは「謙虚な人」でした。たとえ不器用だったり、能力が劣っていても、謙虚さを持つ人の方が伸びしろがあるような気がします。
「ここで言いたいのは、人間は無知である、ということではない。人間は 自分が思っているより 無知である、ということだ。」
ー「知ってるつもり」P.17
『知ってるつもり 無知の科学』は、人間がいかに無知であるかを教えてくれます。
『知ってるつもり 無知の科学』
著者:スティーブン・スローマン
:フィリップ・ファーンバック
翻訳: 土方 奈美
発行:2021年
発行所:早川書房
本書によると、人間は、わずかなことしか理解していないのに、実際より深く理解していると感じる「知識の錯覚」を抱く生き物なのだそうです。
知識の錯覚とは、例えばトイレの仕組みや、洗剤の作り方については何も知らない。それなのに、知らないことを自覚すらせず、無意識に知っているような気になっている事です。
このような「知識の錯覚」はなぜおきるのか?
それは知識のコミュニティ(共同体)に身を置き、他の人と協力して生きているからだと説明しています。 (自分の知識と他の人々の知識が区別できていない)
私たちは共同してモノを考えるため、チームで活動することが多い。これはすなわち個人としてどのような貢献ができるかは、知能指数より他者と協力する能力によって決まる部分が大きいことを意味する。ーP.30
問題は無知そのものではない。無知を認識しないがゆえに、厄介な状況に陥ることだ。ーP.309
本書は無知を、どういうふうに考えて対処していけばいいかを教えてくれる良書です。
子供には、無知な事を自覚して謙虚になり、他の人の意見にも耳をかたむけ、いろいろな事を吸収できる大人になってほしいと思っています。
何かのテーマについて書かれた本や記事などを読むと、肯定的な意見も否定的な意見も、両方とも極端な場合があります。そういう時は大抵、両方の中間の意見が的を得ていると思えることが多い気がします。間違った知識や偏見のある考え方を身に付けるぐらいなら、無知の方がまだマシかもしれないとも思いました。
カナダのマニトバ大学特別栄誉教授のバーツラフ・シュミルの書は、数字に裏打ちされた内容で、著者自身が言うように、「事実をはっきりさせること」を目的としている書になっています。
『Numbers Don’t Lie: 世界のリアルは「数字」でつかめ!』
著者:バーツラフ・シュミル
翻訳:栗木 さつき
:熊谷 千寿
発行:2021年
発行書:NHK出版
『世界の本当の仕組み』
著者:バーツラフ・シュミル
翻訳: 柴田 裕之
発行:2024年
発行書:草思社
『Numbers Don’t Lie』ではいろいろな事を、71のコラムにまとめて、『世界の本当の仕組み』では、「エネルギー」や「食料」、「グローバル化」など、7つのテーマを挙げて、数字という根拠を示しながら、それぞれを丁寧に解説しています。
どちらもしっかりした内容で面白く、下手に知識をあれこれ詰めるよりは、このような本をしっかり読んだほうが、知識を得るのに有効だと思いました。
私は、バイアスのかかった特定の現実解釈を提唱して、絶望をもたらしたり果てしない期待を抱かせたりするつもりもない。私は悲観主義者でも楽観主義者でもなく、世の中の実状を説明しようとしている科学者であり、その知識を使って、人類の未来の限界と機会についての理解を私たちが深めることを目指している。ー『世界の本当のしくみ』P.14
過激な文章の本の紹介文や、見出しと全然違うネット記事を読んでウンザリした経験が何回もあります。そのために、ネット記事などは必要な事を最小限に、本は必ずレビューに目を通すようになりました。