よく自己啓発本などで、「死を意識することで人生を充実させる」というような考え方を目にします。締め切りを決めることで仕事がはかどる、みたいなことでしょうか。
実は死に関する研究で、「存在管理脅威理論」という理論があり、死を意識すると道徳観が高くなることがわかっているそうです。
私自身も、2017年に中学からの友人だった同級生が亡くなり、残りの人生などについて考えることが増えました。しかし、このような考えは決してネガティブな事ではなく、むしろポジティブな事だと思っています。
友人が亡くなってからは、「人生は楽しまなくては」との思いが強くなり、旅行に行くのが増えました。その他にも、つまらない仕事が重なり時間に追われたりしても、先のことを考えて気が紛れ、以前よもストレスを感じなくなった気がします。
『余命10年 多発性骨髄腫になって、やめたこと・始めたこと 』
著者:岸 博幸
発行:2024年
発行所:幻冬舎
バラエティ番組などにもよく出演する、元官僚で大学院教授の岸 博幸さん。本書でがんに罹っていることを知って驚きました。
血液のがんと言われる「多発性骨髄腫」を患い、余命10年の宣告を受けた著者が、残りの人生を踏まえて考えた家族のこと、仕事のこと、未来のことを語ります。
大学院教授らしく、第六章では明るい日本の未来を築くためとして、少子化対策や雇用制度に対しての考えや、社会保障制度の抜本的改革など、5つの提言をまとめています。
本書を通して感じられたのは悲壮感のようなものではなく、人生の残りがわかってラッキーだったと語るような「明るさ」でした。
今年の1月に亡くなられた、経済評論家の山崎元さんの晩年の著作も死を前にしながらもネガティブな事は語らず、前向きな内容でした。二人とも現実的で合理性を問う経済の専門家だからなのか「人間いつかは死ぬもの」と、普段から死を現実的に受け止めていたのかも知れません。
できれば私も人生の出口が見えた時には、うろたえたりせずに明るく残りの人生を送りたいと思っています。
『THINK LIKE A MONK モンク思考』 Kindle 版
著者:ジェイ・シティ
訳:浦谷計子
発行:2021年(電子版発行)
発行所:東洋経済新報社
僧侶になることを目指した著者が、修行生活を重ねるなかで得た気づきや、僧侶の考え方を披露し、僧侶的な考え方の「モンク・マインド」と、常に不満を持った多くの現代人の考え方を表す「モンキーマインド」との違いを詳しく解説しています。
本書でも巻末の方で、「自分の死の瞬間を思い描くと、人生を俯瞰できるようになる。」と説き、始めに、①人生を早送りして死の床にいる自分を想像しながら、その時に感じると思われる後悔や経験しておきたかった事などを考える。また、②死んだあとに周りにどんな影響を与えて終わりたいかを考える。
この2つの「死の瞑想」を実践し感じたことを、自分の願いを叶える原動力にしてほしいと語り、死を意識することの重要さを説いています。
科学の進歩からか、昔と比べて自己啓発本や、宗教的・道徳的な教えを説いた本などに、脳科学や心理学の研究をエビデンスとして紹介している本が増えたと感じています。
上記の『モンク思考』の中でも、「怒りと許し」や「欲望」「恐怖」「執着」などネガティブな事への対処の仕方を、関連した研究やエビデンスと共に、説得力のある内容で解説しています。
個人的な考えですが、今までの既存の宗教や道徳を見直した、科学的な裏付けもった宗教・道徳の教え(道徳2.0)みたいなものがもっと出てくるのではないかと思っています。
スティーブ・ジョブズが瞑想を生活に取り入れてた事は有名ですし、Googleなどのビックテックなども、マインドフルネス瞑想を導入しているとのニュース記事もありました。
ネット上やSNSでは、相変わらず罵詈雑言や殺伐としたものも見られますが、新しい宗教観や道徳観が広がり、今より少しでもネガティブな事が減っていけばと少し期待しています。
出自は忘れましたが、「世界は51対49で良いことが勝っている」という言葉を思い出しました。