「死」を語る(その1) 

自分の本棚を眺めてみて、タイトルに「死」が入っている本や、「死」について書かれている本が何冊かあるのに気づきました。特に死への憧れや自殺願望、死に対する恐怖心などは持ってないのですが・・・。


『自殺』
著者:末井昭
発行:2013年
出版社:朝日出版社

本書は、元・白夜書房、取締役編集局長の末井昭さんが”朝日出版社第ニ編集部ブログ”で毎月1回連載していた記事「自殺」をまとめたものです。第30回講談社エッセイ賞を受賞しています。

小学校に上がったばかりのころに、母親が隣家の青年とダイナマイト心中をするという過去を持つ末井昭さん。東日本大震災をきっかけに「自殺についての記事を書く」ことに取り組んでみようと思い始め、「自殺」の連載を始めました。

末井さんの文章は正直で、いい意味で忖度がありません。「どうしても死にたいと思う人は、まじめで優しい人たいなんです。」と、自殺については否定的にならず、しかし肯定もしない末井さん。そんな優しい末井さんの語る「自殺」や「人生」や「社会」は、たとえ悲観的なことでも、温かくて時には笑いにする強さのある内容の話です。

本書の帯には、多くの著名人の賛辞の言葉が載せられていますが、漫画家「東海林さだお」さんは次の文章を寄せています。

『自殺を語るには資格が要る。(・・・)有資格者でなければ据えることことのできない視点がそこここに見える・』ー本書、帯より。

本書を読み終えたあと、まさに末井昭さんは自殺を語る「有資格者」だと思いました。一時は億単位の借金を抱えた事のある末井さん。失礼な言い方ですが、失敗した人間の懐の深さと、その失敗を失敗で終わらせない強さを改めて教えられた1冊です。


『死ぬ瞬間 死とその過程について

著者:E・キューブラー・ロス
発行:1998年
出版社:中公文庫

著者のキューブラー・ロスは、精神科医で終末期研究の先駆者として知られています。そんな著者は200人もの末期患者を取材をすることで、人間が死に近づいていく過程で、どのような葛藤や心の変化を起こすのか調査しました。

その調査の結果により、人間が死を受け容れるまでに5つの段階があることがわかってきました。

「死の受容」までの5段階
第一段階・・・否認と孤立
感情的になって事実を否認する段階。周囲の人と認識などにギャップがおきる為、孤立状態になりやすい。

第二段階・・・怒り
事実を認めるものの、自分が置かれた境遇を不運と感じ、反発心や怒りにとらわれる段階。

第三段階・・・取引
死の先延ばしができるならばと神仏に願ったり、善行を行って死を回避しようと願う段階。

第四段階・・・抑うつ
死が回避できないと悟り、抑うつや絶望的な状態になる段階。

第五段階・・・受容
死を避けられない自然なものとして受け入れて、それぞれの死生観を形成し、心静かで穏やかな状態になる。

本書の初版発行は1965年でベストセラーにもなり、今でも死学(サナトロジー)やターミナルケアの参考書として読み継がれています。

ちなみに、著者のキューブラー・ロスは晩年は「死後の世界」に興味をもち神秘主義の方へ傾倒していきました。


『今日は死ぬのにもってこいの日』
著者:ナンシー・ウッド
画: フランク・ハウエル
訳: 金関寿夫
発行:1995年
出版社:めるくまーる

プエブロ族の古老たちが語る哲学を、長年交流のあった、作家で詩人のナンシー・ウッドが素敵な詩と散文にまとめ、フランク・ハウエルが描く素晴らしい肖像画と共に、1冊の本にまとめました。本書後半部分には、英語原文も収録されています。

プエプロ族とはアメリカ合衆国、アリゾナ州北東部とニューメキシコ州に定住するアメリカインディアン(ネイティヴアメリカン)の総称です。

今日は死ぬのにもってこいの日だ。
生きているものすべてが、わたしと呼吸を合わせている。
すべての声が、わたしの中で合唱している。
すべての美が、わたしの目の中で休もうとしてやって来た。
あらゆる悪い考えは、わたしから立ち去っていった。
今日は死ぬのにもってこいの日だ。
わたしの土地は、わたしを静かに取り巻いている。
わたしの畑は、もう耕されることはない。
わたしの家は、笑い声に満ちている。
子どもたちは、うちに帰ってきた。
そう、今日は死ぬのにもってこいの日だ。    ー本書 P39より

私がこの本を手に入れたのは、複合型書店の「ヴィレッジ・ヴァンガード」。本が置かれている棚の隣にアロマ製品が並べられていたので、本にお香の香りが染み付いていました。本を購入して、しばらくの間は、そのお香の香りを楽しみながら読書ができました。


『100日後に死ぬワニ』
著者:きくちゆうき
発行:2020年
出版社:小学館

タイトルにあるように、主人公のワニは100日後に死にます。その死ぬまでの100日間を、1日4コマのマンガで描いた作品。通称「100ワニ」

本作品は、作者のツイッターアカウントで連載され、連載最終日には、ツイッターのトレンド世界1位を記録しました。

時には前フリのある一日もあるが、ほとんどは他愛のない毎日を過ごしながら100日後へ向けてカウントダウンが進みます。そんな他愛のない何気ない一日一日がいろいろ繋がってきて、じわじわと心に響いてくる。帯にあるように「あたりまえ。だから愛おしい。」まさにそんな作品です。

読み終えたあと、またすぐ読み直したくなる作品でもあります。


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