落合の打撃、野村の采配

私は運動神経が悪く、スポーツが苦手です。しかしスポーツ観戦や「NUMBER」のようなスポーツ雑誌を読むのが大好きです。これまでに野球に関する本をいくつか読んできましたが、「落合博満バッティングの理屈」と「野村克也野球論集成」の2冊は群を抜いて面白かったです。


『落合博満バッティングの理屈』著者:落合博満

第1章 野球は理屈で考えよう
第2章 目とバッティング          
第3章 軸足の使い方             
第4章 下半身のメカニズム         
第5章 上半身のメカニズム          
第6章 スタンスについて考える
第7章 大きく速いスイングを身に付けよう   
第8章 バットの選び方、握り方
第9章 野球選手のためのトレーニングとは
第10章 いくつかの❝どうすればいいか❞を解決する
第11章 写真で確認する正しい技術と動き   
第12章 腕とバッティング
第13章 バッティング技術が向上する練習法
第14章 相手バッテリーを丸裸にする
第15章 机の上でも野球をやろう
第16章 技術も上達させる野球の考え方
第17章 選手と指導者は二人三脚でレベルアップを目指そう

通算成績、打率.311、510本塁打、1564打点、2371安打を記録。史上初の3度の三冠王に輝いた最高のバッターが考え抜いた「すべての打者に共通するバッティングの理屈」

この本は、落合博満さんによる、バッティングと野球の解説書です。野球専門誌「週刊ベースボール」に連載され、のちに単行本化された「超野球学バッティングの理屈」を再編集し、復刊したものです。


「野球は理屈で考える」という考え方から始まって、体の使い方、バッティングフォーム、バットの選び方など、ひとつひとつを丁寧に解説。スイングやフォームの説明では多くの写真を使ってわかりやすく解説しています。

本書を読んで、これまでの落合さんのイメージが変わるような話がいくつもありました。例えば第1章で「センター返しが基本」について書かれているのですが、その中で現役時代はセンター返ししか狙っていなかった、ライトに狙い打ったことは一度もないと発言しています。落合さんと言えば広角打法が有名。右に左に打ち分けるバッティングで、外角の球を何本もライト方向にホームランにしていました。そんな落合さんがライト方向に狙ったことが一度もないとの発言は驚きです。

またケガのために調整でファーム(2軍)に行った時に、1軍を目指している若手を見て、技術的にいいものを持っていると再認識し、自分のバッティングにも取り入れたいと感じるものもあったと告白しています。落合さんの野球に対する貪欲さをうかがい知れます。

他にも感心したのが、押さえどころと柔軟性。スタンスについての解説では、オープンスタンス、クローズドスタンス、それぞれのメリットや注意点をつま先の向く方向まで含めて細かく解説している一方で、スイングの解説では「トップ以前にフォームの欠陥はない」と明言し、正しいトップの位置に入れることができるなら、トップに入るまでのフォームや動きは個人の自由でいいと、柔軟な考え方も披露しています。

バッティングの重要なポイントをわかりやすく解説した名著だと思います。


『野村克也野球論集成』著者:野村克也

第1章 野球と人生
第2章 野球とは
第3章 投手論
第4章 捕手論
第5章 打者論
第6章 走塁・作戦論
第7章 守備論
終章

三冠王1回、首位打者1回、本塁打王9回、打点王7回を記録。通算本塁打657本は王貞治に次いで歴代2位。
また監督として通算1565勝を挙げ、現役時代に南海ホークスで選手兼任監督として、「4番・キャッチャー・監督」の経験を持つ。


野球論や人生論の著作が多い野村克也さんですが、そんな野村さんの野球論の集大成と言える1冊。

結果が求められるプロ野球界の中に身を置きながらも、結果は一部でしかなく、結果よりもプロセス(過程)の方が大事とするプロセス重視主義を挙げています。また野球の本質は「団体競技」であるとしてチームワークの重要性を説いています。

野球に対する解説は、細かなことまで徹底的に考え抜かれていて、例えば投手論の章では、ボールカウントの初級(0ボール-0ストライク)からフルカウントの(3ボール-2ストライク)までの全12種類のカウントを細かく解説しています。

他にも捕手論では「ダブルスチールの阻止の仕方」、打者論では「チャンスに打席に入る時の心構え」走塁論では「トリックプレーでの走者・打者の動き」、守備論では「ゴロの捕り方・フライの捕球」など、まさに微に入り細に入った解説です。


「落合博満バッティングの理屈」、「野村克也野球論集成」2冊とも内容の質・量が凄く、とても簡単にまとめる事ができません。

二人に共通していることは、何か問題を考えるときに、その考えが「理にかなっているかどうか」ということ。強引な精神論がないのですごく納得できる解説が多いです。

もう一つ共通しているのが、野球に対する貪欲さ。落合さんは「バッティングには最終結論は無い」と言い、野村さんは「配球は1球、1球が応用」と答えています。「これでいい」と断言できる答えはなく、考え続けることが重要だと語っています。

野球の解説書としてだけではなく、ビジネス書としても読める充実した内容の2冊です。


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