“ChatGPT”などのチャットAIがだいぶ話題になっています。これから数年で、人の生き方や地球の未来を変えるとまで書かれた記事も見かけるようになりました。
『人工知能は人間を超えるか』ディープラーニングの先にあるもの
著者:松尾 豊
人工知能(Artificial Intelligence:略してAI)について書かれた入門書です。
著者の松尾豊さんは、東京大学の教授で日本のAI研究の第一人者。最近でも日本語と英語に対応した、”大規模言語モデル(LLM)”を開発、しかもそれを無償で公開しています。(チャットGPTは主に英語に対応しているため、日本語での質問には回答の賢明さが落ちるそうです。)本書の”はじめに”では、2002年当時、すでにインターネットの大量のウェブページを分析することで適切な広告が打てるはずだと、かなり先取りした研究提案をしていたことが書かれています。
本書では、まず第1章で”人工知能とは何か”をテーマに挙げ、専門家と世間の認識のズレを指摘、例えば人工知能の研究とロボットの研究を同じものと思っている人が少なくないことを挙げ、「ロボットの脳に当たるのが人工知能である」とわかりやすく説明しています。また何人かの専門家による”人工知能の定義”も掲載し、人工知能について詳細にそして丁寧に解説しています。
続く第2章から第5章までは。人工知能の研究の歴史について、そして第6章、終章で人工知能のこれからと産業や社会に与える可能性を語っています。
AIに何が出来て何が出来ないか、これから何ができるようになるかを解説したオススメの入門書です。
『ロボットとは何か』人の心を映す鏡
著者:石黒 浩
著者の石黒浩さんは、人間酷似型ロボット研究の第一人者。権威ある学術雑誌”Science”の表紙を飾ったこともあります。
この本はロボット工学を説明した本ではなく、ロボット制作を通して「人間とは何か」をさぐる、人間探究の本になっています。(もちろんロボット工学や研究の話も多くでます。)
本書の中で石黒浩さんはロボットのことを”優れた人間の鏡”と言い、「人間を理解したい」という根源的欲求を満たす格好の道具とも述べています。また自らの研究テーマの基本問題は「人間の理解」と語り、「人間の存在とは何か」など、哲学的な問いに関する話も多いです。
石黒浩さんのインタビューや講演はユーモアたっぷりで、思わず感心する話や面白い話が多いです。You Tubeである講義を見ていたら、人間には生身の肉体はいらない、将来人間の体は頭を除いて無機質(機械的)になるとの持論を話されてました。そして質疑応答の時に、その持論に否定的な一般の人と討論していたのですが、石黒浩さんはその討論の中で、「では、あなたは義足の人を見て、あの人は70%の人間だと思うのですか?義足でも100%人間だと思うでしょう。」とおっしゃってました。私は、まさに目からウロコの話だと感心しながらその講義を見てました。
『昭和の消えた仕事図鑑』
文=澤宮優、イラスト=平野恵理子
タイトルにある通り、115種類の昭和の消えた仕事がイラスト付きで載っています。厳密にいえば、完全に消えた仕事と、呼び方が変わって残っているもの、呼び方も変わらず残っている仕事もあります。”消えた仕事”というより、一般的でなくなった仕事と言ったほうがいいものもいくつかあります。
載っている仕事のいくつかを紹介
消えた仕事の代表的なものは、「バスガール(路線バスの女性車掌)」、「車力屋(大八車で荷物を運ぶ人」、「新聞社伝書鳩係(原稿をつけて飛ばすための伝書鳩を育てる係)」など。
呼び方が変わって残っている仕事は、「円タク(タクシー)」、「よろず屋(雑貨店)」など
一般的でなくなった仕事は、「人力車」大正時代にタクシーが出るまでは、一般的であった。現在では、観光用として見かけます。「藍染め職人」たんに職人が減っただけで、完全に消えたわけではない。
初めて聞く職業や、「こんな仕事で食えてたのか」と驚くことが多いです。ほとんどの世代で楽しめる本だと思います。戦前や戦後、昭和の社会情勢を知るのにも役に立つ1冊です。
AIやロボットの話になると、「AIの登場でなくなる職業」とか「ロボットに仕事が奪われる」的な話がよくでてきます。また本屋でも「10年後に残る仕事」みたいなタイトルの本をよく見かけるようになりました。
そんな折に、本書「昭和の消えた仕事図鑑」を見つけちょっと気になったので購入しました。そして読み終えた後、消えゆく職業に対してある考えが浮かびました。
AIや、ロボットが無かった昭和の時代でも消えゆく職業はあります。職業について考える場合、どんな職業が残るかが重要なのではなく、自分が就いている職業が、いつかは無くなるかもしれないと考え、無くなったあとに新しい職業に就けるよう柔軟に対応できるかが大事なのではないかと思いました。
どんな時代でも消える職業はあるし、新しく生まれる職業もある。「ウェブデザイナー」や「ユーチューバー」は昭和には無かったものです。AIだ、ロボットだと、変にあおられずに、まず冷静になって考えること。これが一番だと思いました。
間違っても危機感を持つなとか、どうせ消えるのだから難しく考えるなと言っているわけではありません。