『超予測力 不確実な時代を読む10カ条』
著者:フィリップ・E・テトロック、ダン・ガードナー
著者のテトロックは、心理学者、ガードナーはジャーナリストです。
私がこの本を知ったのは、いろいろな書籍で著者のテトロックの名前が出ていたり、本書「超予測力」が参考文献としてあげらていたからです。
例えば、心理学者のスティーブン・ピンカーの「21世紀の啓蒙」、リスク研究者のナシーム・ニコラス・タレブ著「ブラックスワン」、そして心理学者でノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンが書いた「ファスト&スロー」。これらの書籍で取り上げられていました。
表紙や副題の”不確実な時代を読む10カ条”などを見ると、ちょっとしたビジネス本のようですが、中身はかなり濃い研究内容の本です。
著者のテトロックは、専門家の予測がどれだけ的中するかを調べました。その結果の予測精度のあまりの低さに「チンパンジーのダーツ投げ並み」と例え、話題になりました。
その後に、テトロックの研究チームが2万人以上のボランティアの協力のもと(専門家から一般の方まで)、予測研究プロジェクトを実施します。本書では、その予測研究プロジェクトについて書かれています。
このプロジェクトは、参加者に「来年の内にEUを離脱する国はあるか?」など、具体的な質問で市場動向から政治情勢まで予測してもらいその結果をまとめました。
プロジェクトの結果は、専門家ほどその専門分野では予測が当たらないというものでした。その一方で、並外れた予測力を持つ”超予測者”がいたことが判明します。しかも専門外の素人が多くいたそうです。
その”超予測者”をくわしく調べるといくつかの特徴があることがわかりました。その特徴は、
・自分の予測が間違いだと分かった場合、素直に間違いを認める。
・知的好奇心が強く、自分のおかれた環境が変化することも気にしない。
・考え方が保守的でもリベラルでもなく、特定の政治信条などがない。
・予測したあとでも意見を変えられる。(予測が当たらない人ほど最初の考えに固執する。)
・自分の意見に賛成な意見よりも反対意見に耳をかたむける。
・利用可能性バイアス(手短な事例を元に考える)などに気づいている。
などです。私はこれらの結果を見て、”人の話を聴く”などの”謙虚さ”が一番大事なんだと思いました。
昔は”謙虚になれ”と言うと、人生訓とか倫理とかの話になったと思うのですが、現在では研究結果として謙虚さの有効性が証明されています。
私は子供にはぜひ謙虚さを身に着けてほしいと、謙虚にひかえめに思うようにしています。