20年以上前のことですが、キューバ音楽の”ソン”(サルサの原型になったといわれている)をよく聴いていた時期がありました。きっかけは当時、小説家の村上龍さんがエッセイ等でよくキューバの事を紹介していたのと、映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を観たことです。ミュージシャンというだけでカッコよく感じますが、映画に出演する老ミュージシャン達は、人としても魅力的に思えました。
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ライ・クーダー
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
ファン・デ・マルコス・ゴンザレス
イブライム・フェレール
コンパイ・セグンド
エリアデス・オチョア
オマーラ・ポルトゥオンド
ルベーン・ゴンサレス その他
上映時間:105分 2000年公開
1997年、ロックギタリストでスライド・ギターの名手、ライ・クーダーがキューバの老ミュージシャン達とセッションを行い、アルバム「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を制作しました。このアルバムは世界で100万枚以上のセールを記録し、97年のグラミー賞も獲得します。
1999年には、映画「パリ・テキサス」のヴィム・ヴェンダースが監督となり、演奏の様子や、カーネギーホールでの公演、また老ミュージシャン達の日常などを撮影した、アルバムと同名のドキュメンタリー映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」も作られました。この映画も世界でいくつもの賞を獲得し、第72回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞にもノミネートされました。
映画の冒頭は、アムステルダム公演から始まるのですが、1曲目「チャン・チャン」の出だしの音を聴いて一発でしびれました。
中盤で出演者のひとりイブライム・フェレールが、「キューバ人は感謝の気持ちを忘れない。もし物欲の道をたどっていたらキューバ人はとっくに滅んでいただろう」と社会主義を称賛するように語るシーンがあります。一方で別の出演者が、カーネギーホール公演のために訪れたニューヨークで、ビルの大きさや道路のきれいさに驚きながら「いい街だ」と素直に語っているシーンもあります。
個人的な意見ですが、このニューヨークでのシーンを観ていて、キューバにはロシアや中国といった共産圏の大国とは違う、柔軟さや包容力みたいなものがあるように感じました。
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ 5』
CD5枚組
・コンパイ・セグンド
・ルベーン・ゴンサレス
・イブライム・フェレール
・エリアデス・オチョア
・オマーラ・ポルトゥオンド
2006年に仕事で韓国に行った際に、CDショップで偶然見つけたアルバムです。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの主要メンバー5人の楽曲を収録しています。ライナーノーツは、スペイン語と韓国語のため、詳しい解説はわかりません。たしか5枚組で2500円程度だったので、安いと思い買いました。
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ アディオス』
制作:ヴィム・ヴェンダース
監督:ルーシー・ウォーカー
出演:ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
上映時間110分 2018年公開
前回の「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の公開から18年後、主要メンバーの何人かはすでに他界している中、残ったメンバーによる最後のツアー「アディオス(さよなら)世界ツアー」が行われました。
本作は、このツアーの模様を中心に、前作の未収録映像も収めたドキュメンタリー映画になっています。前作以上に、メンバーの人生の浮き沈みや、死についても描かれています。
今回、この記事を書くために、もう一度見直しましたが、やっぱり、いつ観てもカッコいい爺さん、婆さんたちだと思いました。
正確な文面は忘れましたが、村上龍さんがキューバ人のことを「生きていくのに、音楽を必要とした人たち」と、エッセイで書いていました。
映画を観ていると確かにそうだと、うなずけることが多かったです。