ステーキハウス秘話

私は19歳のころにステーキハウスで1年半ほどアルバイトをしていました。沖縄ではけっこう有名なチェーン店です。鉄板焼きステーキが売りで、お客の前でコックが実際にステーキを焼きながら、ちょっとしたパフォーマンスをする、主に観光客がよく来るようなお店です。1989年のことで、まだバブル経済の余韻が残る時代でした。

私の友人が先にそのステーキハウスでコックとして働いていました。夏が近づき観光客も増え、忙しくなっていたため、友人からアルバイトでコックの仕事に入らないかと誘われました。しかし私はものすごく不器用だったので、コックのパフォーマンスが無理だと断り、その代わりに皿洗いのバイトでそのステーキハウスにはいりました。

2ヶ月程たった夏のある日、150人近い数の団体客の予約が入りました。お店には15台のテーブルがあったのですが、それが同時にすべて埋まる状態になります。その日のコックは7人。1人のコックで2つのテーブル(隣同士)を受け持つとしても、どうしても1つのテーブルが空きます。客前でパフォーマンスを行うのでどうしてもコックの人数が必要です。まとまった団体客が入る場合、他店舗からコックの応援が来ることもあったのですが、その日は他店舗も忙しく、それも無理でした。

どうしたものかと、考え込んでいたチーフ・コックが不意に「おまえテーブルに出ろ」と私に言ってきました。私はすごく驚きました。

通常その店では新人のコックはまず、先輩のコックと一緒に10人ほどのお客を相手にパフォーマンスします。それから慣れてくると、1人で2~4人のお客にパフォーマンスをし、そして8~12人のお客を1人で受け持つようになります。

それが私の場合いきなり1人で8人のお客の前に出る状況になりました。「俺が終わり次第、応援に行くから」とチーフに言われましたが、ただでさえ、不器用な私には不安しかありませんでした。

結論をいうと私のデビュー戦は、どうにか無事に終わりました。予定通り途中からチーフが応援で加わり、細かい事はあまり覚えてないまま、デビュー戦を終えました。

その日を境に私はコックになりました。とんでもなく不器用でしたが、ひとつ大きな武器がありました。それは”フケ顔”です。お客の前でパフォーマンスするのにこれは大きな武器になりました。2ヶ月もたつと早くも効果が出て、バブリーなマダムに「これぐらいやるのに、やっぱり2年ぐらい必要でしょ?」と言われ、思わず「いえいえ、まだ1年です。」と6倍ものサバを読んでしまいました。(すいません。だますつもりは、無かったのですが。)

また姑息なテクニックも身につけていきました。派手なパフォーマンスが出来ない私は、ときに間がもたないことがあったのですが、その時は周りのテーブルの様子を気にかけるそぶりをしていました。(自分よりも若く見えるコックのテーブルです。)するといかにも周りも気にかけながらパフォーマンスをする、ベテランコックの出来上がりです。(すいません。本当に騙すつもりは無かったです。)

何人ものお客に、「ベテランですよね」とか「もう長いんでしょ」とか言われました。これも私の強力な武器”フケ顔”のおかげだと思っています。


私は若い頃は、人見知りで内向的な人間だったのであまりアルバイトはやらなかったです。

子供にはアルバイトとか色々経験してほしいですね。経験の多い人は寛容な人が多い気がします。


我が家ではステーキを食べる時はいつも、当時のステーキハウスのメニューにしています。

レシピを簡単に紹介。

まず5ミリぐらいにスライスした玉ねぎ、ピーマンをバターで炒め火が通ってきたらじゃがいも(2センチ角にカットしたものを先に素揚げしておく)を入れ軽くまぜ、そこに塩・ブラックペッパー(できれば粗挽き)を振り皿に取ります。

次に、にんにくのみじん切りをバターで炒め、香りが出たらサイコロ状にカットしたステーキを入れ、塩・ブラックペッパーを振ります。そして料理酒(店では赤ワイン)を少々いれ、仕上げに醤油を少しかけ皿にとります。

最後に、もやしと一口サイズに切ったチンゲン菜をバターで炒めます。塩・ブラックペッパーを振り、料理酒(店では白ワイン)をかけ、フライ返しなどで、フライパンの底についたステーキのこげなどをとりながら炒めます。そうすると、もやしに肉汁などが、からみうまいです。仕上げに醤油を少々。

シンプルですがうまいですよ。


#ステーキ #アルバイト #牛肉

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