私は陰謀論とか都市伝説などの話が好きで、テレビなどでそういった話が流れていると、ついつい気になって番組を観てしまいます。しかし、実際に陰謀論や都市伝説を信じているかというと、ほとんど信じてなくて、あくまでも「よく出来た話」フィクションとして楽しんでいます。
たとえば、映画「ダ・ヴィンチ・コード」はとても面白く楽しめました。
『世界の陰謀論を読み解く』
著者:辻 隆太朗
発行:2012年
出版社:講談社
はじめに 世界は陰謀に満ちている
第一章 日本──コンスピラシー・セオリー・イン・ジャパン
第二章 ユダヤ──近代陰謀論の誕生
第三章 フリーメーソン──新しい「知」への反発
第四章 イルミナティ──陰謀論が世界を覆う
第五章 アメリカ──陰謀論の最前線
第六章 陰謀論の論理──なぜ私たちは陰謀論を求めるのか
ユダヤ陰謀論、フリーメーソン、イルミナティから、オウム真理教の陰謀論、震災デマまで、世界の陰謀論を解説。
本書の中で著者の辻 隆太朗さんは、陰謀論は、想像以上に社会に受け入れられていて、歴史の中では絶えず語られつづけてきており、例えば『シオン賢者の議定書』をきっかけに世界中に根付いてしまった「ユダヤ陰謀論」は、第2次世界大戦におけるユダヤ人の運命に少なからず影響を与えたとしています。
そうだとすると、もしユダヤ陰謀論がなければ、約600万人のユダヤ人が虐殺された「ホロコースト」は起きなかったかもしれないとも考えらます。(もちろんユダヤ陰謀論だけがホロコーストの原因だとは思いませんが)
陰謀論がただのミステリー好きが興味本位で喋っているだけならまだ楽しめますが、大虐殺のような事にまで継ると考えたら、陰謀論を本気で信じている人の見方を考えてしまいます。
著者は本書の「はじめに」でこう語ります。
「陰謀論の主張自体は無価値である。しかし、そのような主張が存在するという事実、受け入れられているという事実を知ること、それに対して「なぜ」を問うことには価値がある。」
この考え方はとても大事に思えて、陰謀論を信じていなくても、陰謀論の基礎的な事を知るのは重要なことだと感じました。
以前にネットで、陰謀論を信じやすい人は「うまくいっていない」と感じているひとが多い、という記事を読んだことがあります。「人生がうまくいかないのは、自分に原因があるのではなく、世の中がおかしいのだ。」と考えるためである、と書かれた記事を読んで、すごく納得した覚えがあります。
陰謀論とまでいかなくても、今のネットにはデマやフェイクニュースが多く、虚偽の情報が溢れています。
今から18年程前に、ITクリエイターでフリージャーナリストの「コモエスタ坂本」さんが書いた『低度情報化社会』という著作がありました。
インターネットの普及により社会は大量の情報を瞬時に扱えて、社会は飛躍的に進化した「高度情報化社会」に突入すると考えられていましたが、実際にはネットはジャンク情報にあふれ、私達は自分の考えに近い情報ばかり検索したり、似たような人達だけでまとまってしまう「低度情報化社会」が進んでしまったと、警鐘を鳴らしていました。
『低度情報化社会』は2006年に出版されていたので、かなり早い時期からインターネットに対しての注意を呼びかけていたことになります。
20年近くたった現在をみても、状況は大して変わって無いように感じられ、むしろ多くのSNSの出現により「低度化」が進んだ部分もあるのではないかと感じています。私達は一度はこういった「低度化」の問題をしっかりと考えて、特に子供達には早くからネット情報の扱い方を教えた方がいいように思いました。
現在のインターネットの状況や注意点を知るのに役に立つ、おすすめの本を紹介します。
『デジタル空間とどう向き合うか 情報的健康の実現をめざして』
著者:鳥海不二夫、山本龍彦
発行:2022年
出版社:日経BP、日本経済新聞出版
第 1 章:アテンション・エコノミーに支配される私たち
第 2 章:デマの拡散や炎上はなぜ起こるのか、
誰が起こしているのか
第 3 章:分断を加速する フィルターバブルとエコーチェンバー
第 4 章:デジタル空間と言論の自由
第 5 章: プライバシーと尊厳はいかにして 保護されるべきか
第 6 章 情報的健康をどう実現するか
本書によると、現在のインターネットは「アテンション・エコノミー」をビジネスモデルにしていると説明しています。アテンション・エコノミーとは情報過多の状況において、いかに人々の関心をひくかを重要視した考え方です。関心をひいてクリックを誘発させるために記事の内容と違うタイトルを付ける「タイトル詐欺」みたいなことも起こっていると指摘しています。(あたりまえと思える程「タイトル詐欺」は多いですね。)
他にも社会の「分断」や「極化」を加速させるとして、『フィルターバブル』や『エコーチェンバー』にも注意を促しています。
『フィルターバブル』とは、ネット上で情報を得る場合、私達は知らない間にシステムが作った推薦システム(オススメ)の影響を受けています。つまり私達は、システムの泡(バブル)に囲まれていて、フィルターを通った情報(おすすめ)ばかりを見てしまうため、自分の好きな情報ばかりに囲まれてしまう状況のことをいいます。
『エコーチェンバー』とは、エコーは(こだま)、チェンバーは(部屋)の意味で、閉鎖的な空間の中で、コミュニケーションがこだまのように繰り返されることにより、特定の考え方や信念が増幅される現象の事をいいます。
『フィルターバブル』はシステムが作った空間内で起こり、『エコーチェンバー』は自らが作った空間で起きるものです。どちらも偏見な考え方や信念に繋がっていくために、社会を分断させてしまうと考えられています。
子供には、陰謀論をフィクションとしても楽しめないような遊びのない人間にはなって欲しくありません。しかし、陰謀論をまともに信じる愚かな人にもなって欲しくありません。また陰謀論を信じないとやっていけないような、「うまくいってない人生」も送ってほしくはありません。